”サムライブルー”という愛称が生まれる以前の、日本代表レプリカシャツ。今や懐かしの”トルシエ・ジャパン”時代のモデルだが個人的に一番好きだ。左胸のJFA(日本サッカー協会)のエンブレムには”三本足のカラス”が。
サッカー日本代表の新しいユニフォームが公表されレプリカ販売も始まった。ド真ん中の赤い一本線が斬新だ。全体の印象は今までの歴代モデルよりも色合いが濃くなっている気がした。2006年W杯ドイツ大会の頃は”サムライブルー”という愛称で、ブルー系だったけど、新ユニはブルーではなく、アジア的な濃紺か藍色(あいいろ)に近い。思えば、かつて武家に好まれた色合いだ。古代から中世にかけては、藍色のことを”褐色”と表記した。今では褐色は黒みがかったブラウン系に近い色だが、昔は西洋でいうネイビーのような色のことだった。”カチ”とか”カチン”などと呼ばれた。”勝つ”につうじるので、武芸をもって古代律令国家に仕えていた武士の先祖たちには縁起の良い色とされたのか。
この国では、もともと”武士”は”さぶらいびと(侍者)”と呼ばれた。平安時代、天皇家や王朝貴族に隷属していた使用人の身分だった。それよりもっと前、ヤマト政権が先住民を征服する過程で多数つくりだされた奴婢(ぬひ)や下人(げにん)よりは身分は上だが、朝廷にとっては身辺警護や紛争処理にあたらせる番犬的存在だったという。”さむらい”は”さぶらふ”を語源とする。元来は名誉ある呼称ではなかった。では、”武士”や”さむらい”と呼ばれた人々の起源はどこにあるんだろうか?
日本が誕生して間もない頃、”健児(コンデイ)”と呼ばれた武芸専従者の集団がいた。ヤマト政権によって、当時「辺境の地」とみなされた地のなかで主に東国に入植させられた。”東国”とは今でいう関東甲信越エリアだ。奈良盆地に拠点をかまえたヤマト政権から”エミシ”と蔑まれた列島先住民が住む未征服の地域(今日の東北エリア)に対する前線基地である。ちなみに、唐と連合して百済(クダラ)と高句麗(コグリョ)を滅ぼした新羅(シンラ)に対抗するため九州に配属された人々は”防人(さきもり)”と呼ばれた。
なかでも東国移住組は、”エミシ”の地への侵略・征服事業に従事させられていく。ヤマト政権が”武家の棟梁(とうりょう)”に与える官職名、”征夷大将軍”の”征夷(せいい)”とは”従わない異民族を征服し従わせる”という意味だ。そういう、いわば”飼い犬”的存在の”侍者”が、のちのち自分たちの利益や権威を脅かす勢力になろうとは、古代の天皇や王朝貴族は思いも寄らなかっただろう。そして、朝廷から”番犬”としてこき使われながら、”侍者”たちは主に東国で開拓農場主として力をつけていった。彼らは朝廷から目の届きにくい環境のなかで、ときには隣り合う勢力と土地や奴婢の奪い合いを演じながら、未開地の開墾や水田開発を進め、社会のなかで生産力拡大の担い手となっていった。”武士団”の誕生である。
武士団というのは”家の子、郎党”と呼ばれる単位から成り立っている。郎党たちも、それぞれ配下を率いている各地域の小リーダーでもある。だから”さむらい”というのは、武士のなかでも、郎党を従えるだけの力のある者だ。当時の絵図などを見て明らかなことは、”侍者”は騎乗していることだ。
注目したいのは、”健児(コンデイ)”といい、”郎党(ろうとう、ランド)”といい、朝鮮起源の言葉だということ。”むさくるしい”という日本語がある。この”ムサ”は朝鮮語でいう”武士(ムサ)”が語源。現代では「男ばかりでむさくるしい」とか抽象的に使われるけど、もとは王朝貴族が武士たちを見下して作った差別用語だろう。
今やヤマト政権をつくった人々が渡来人だということは明白だ。飛鳥時代の朝廷首脳部は伽耶(カヤ、または加羅)諸国、百済、新羅、高句麗など朝鮮半島で興亡した諸勢力の移住者や亡命者で成り立っている。違いといえば、伽耶系(または加羅)、百済系、新羅系などと、その系統がまちまちなだけだ。なかでも高句麗は歴代中国王朝に最期まで敵対した勢力だが、ヤマト政権内部では高句麗系はなぜか立場が下だ。日本という国家が、歴史上、アジア大陸の国々、とくに朝鮮、中国に対する複雑な心情は、かつての故地(こち)に対する郷愁の裏返しかも知れない。武士階級のルーツはおそらく高句麗系か?
武士階級の出自や成り立ちにしても、天皇家や貴族階級と同じく、日本列島のなかで純粋培養されてできたものではなかろう。紀元前後から600年代の東アジア情勢のなかでとらえるべきだ。
日本神話に出てくる”三本足のカラス”だって、古代朝鮮王朝のひとつ、高句麗王家のシンボルマークじゃないか。
5世紀に築造された高句麗(コグリョ)の墳墓内に描かれた太陽のなかの三足烏(サンジョゴ)の模写。奈良の高松塚古墳やキトラ古墳が造られたのは高句麗が滅んだ後の、7~8世紀にかけてだ。
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