当地のしぐれ煮製造会社の一つ、瑞宝産業(ずいほうさんぎょう)の”しぐれ肉巻きおにぎり”(注)。2個セット300円。
”肉巻きおにぎり”というと、九州は宮崎が有名ですが、三重県の桑名(くわな)市という街でも、新しいご当地名物として話題になってます。
たまたま仕事で訪れましたので、実際に食べてみました。見た目は、宮崎のものと変わりはありませんけど、食べてみて納得! おにぎりが”しぐれご飯”。昔からこの地域で親しまれてきた混ぜご飯だそうです。表面に巻いてある豚肉のスライスにも、しぐれ煮を作るときに使った独特のタレに漬けこんであるようで、甘辛い風味が口の中に広がります。
”しぐれ煮”というのは、この辺りの特産物であるシジミ、アサリ、ハマグリのむき身を溜醤油(たまりじょうゆ)をたっぷり入れた大鍋でグツグツ煮込んで作られる食べ物。至ってシンプルな製法ですがシンプルゆえに奥が深いとも言えます。何百年も伝承されてきているんですから。今でも、シジミなどを使ったしぐれ煮はおにぎりの具材としてポピュラーでしょ。昔の人も、しぐれ煮が携帯や保存に向いていることに着目したものと思います。
桑名は、木曽三川(きそさんせん)のひとつである揖斐川(いびがわ)が伊勢湾にそそぎ込む西側に出来た街で、すでに室町時代から港町として広く知られていました。
”しぐれ煮”は、この肉巻きおにぎりを商品化した会社とはまた別の会社にその起源があります。江戸時代の元禄(げんろく)期ごろ。新左衛門(しんざえもん)という人が、それまで”煮蛤(にはまぐり)”と呼ばれていたものを”しぐれはまぐり”というネーミングで商品化して売り出し、「貝屋(かいや)」を名乗ったのがはじまりとか。これが当地で最も歴史のある「貝新(かいしん)」ブランドのルーツです。
ちなみに、その名前の由来は、時雨(しぐれ)が降る頃がハマグリが一番おいしい時期だから、という説があります。”しぐれ”とは、もともと晩秋から冬にかけて突然降りだすみぞれ交じりの雨のこと。一種の気象用語でした。<今日は、シグレるねえー>などと使われます。漢字では”時雨”という字を当てたりします。
ワタクシが桑名を訪れた日などは、まさにその”時雨日和(しぐれびより)”でした。この街から見てちょうど北の方角、岐阜県との県境になっている多度山(たどさん)の山頂あたりに薄暗い雲がぶわーッと広がったと思ったら、ひとしきりみぞれ交じりの小雨がぱらぱらと降ってきました。その日は基本的に晴天でしたので、天候の急変と揖斐川沿いの北風の強烈さにビックリ。
さて、しぐれ肉巻きおにぎり。好き、嫌い、が分かれる味かもしれませんが、ワタクシは好きですよ、この味。食べたことのない人は一度食べてみたら? リアルはヴァーチャルに勝るぜよ。(OのF)
(注)…今回食べたものは豚肉が使ってあった。豚肉を使うか、牛肉を使うかは、店舗によって異なるそうです。
揖斐川は長良川と合流して伊勢湾にそそぎこむ。しぐれ煮の素材となる貝類を育んでくれるこの河も、住民にとっては脅威となる。1959年の伊勢湾台風の際は被害が甚大だった地域でもあり、今はこのような堤防が連なる。旅館の左側に見える建造物は、かつて桑名城にあった櫓(やぐら)の一つを復元したもの。すぐそばに、尾張名古屋の「宮の渡」との間、約28kmを海路で結んでいた「七里の渡」跡がある。
江戸時代のイラストレーター、安藤広重が当時の桑名港を描いた風景画。「七里の渡」跡に通じる旧・東海道近くの水路にかかる橋に埋め込まれていた。客船に近づく左側の小舟は焼きハマグリを売る船だろうか?
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