『日本人はなにを食べてきたか (角川ソフィア文庫)』原田 信男
「食べる」ことは、人間が生きていく上でいちばん大事なことだとワタクシなどは思う。だが、この国では、食べ物のことを話題にすることはながくいやしめられてきた。
この本は、この列島の食文化を、国ができる前の段階にさかのぼって、その歴史の中でちゃんと位置づけてみせてくれる。
現代の日本で犬やネズミの肉を食べたといったらマユをひそめられることだろう。だが、江戸時代初期に世に出た日常の食生活を記録した『料理物語』という書物には獣肉のランク付けがなされている。その記録によれば、カモシカ、ヒツジ、牛、カワウソ、ネズミを上級肉、鹿、猿、ウサギ、犬、キツネを中級肉、イノシシ、タヌキ、オオカミ、猫、クマを下級肉、と位置づけている。平安期以降、すでに社会の上層部では”肉食=ケガレ”という意識が広まってはいたが、それほど獣肉食いが一般化していたわけだ。
「食生活を基軸として日本の歴史を根底から見直した」と著者は言う。普通の文庫本サイズで、「あとがき」を含めても267ページ。分厚い本ではないので通勤電車の中でも読めた。
この本は”天下国家”レベルや一部支配者の視点で論じただけの”歴史もの”とはまったく違う。日本の歴史を「食文化」という庖丁(ほうちょう)で見事に料理して見せてくれている。(OのF)
《参考に》…なお、この本は、『木の実とハンバーガー - 日本食生活史の試み』(NHKブックス、1995)を大幅に圧縮し補筆したもの、だということだ。
『歴探おススメ本』のエントリ
- 『もう一度観たくなる「海峡をつなぐ光」孵化編』海峡をつなぐ光製作委員会・著、(株)平成プロジェクト・監修、知玄舎(C)2011
- 小説『李藝 最初の朝鮮通信使』金住則行(かなずみ・のりゆき)・著 河出書房新社(C)2011
- 『琉球王国 - 東アジアのコーナーストーン』(講談社選書メチエ)赤嶺 守(あかみね・まもる)・著 講談社(C)2004
- 『日本人はなにを食べてきたか』(角川ソフィア文庫)原田信男(はらだ・のぶを)・著、角川学芸出版(C)2010
- 『正倉院の謎』(新人物文庫)由水 常雄(よしみず・つねお)・著、新人物往来社(C)2011
- 『食べる』西江雅之(にしえ・まさゆき)・著、青土社(C)2010
- 『オバサンとサムライ』養老孟司/テリー伊藤 宝島社(C)2004
- 『伽耶(かや)は日本のルーツ』澤田洋太郎・著 新泉社(C)1994
- 『忘れられた日本人』宮本常一(みやもと・つねいち)・著



