『加耶と倭 韓半島と日本列島の考古学 (講談社選書メチエ 398)』朴 天秀
日本列島と朝鮮半島のかかわりの深さがよく分かる一冊だ。とくに、”任那日本府(みまなにほんふ)”についての著者の解明はかなり実態に迫っている。”みまな”という名称は後の日本流の呼び方であり、古代では「カヤ」と呼んでいたのが正確らしい。結論からいえば、従来いわれた”任那(みまな)は古代日本のヤマト政権が朝鮮半島にもっていた植民地”というのは大ウソだったわけだ。ひとりよがりの歴史認識の産物だ。第一、当時「日本」という国号を持つ統一国家はまだなかったんだから。
この本は、国や政治の壁を越えた日韓の若手研究者同士の交流のなかから生まれた一つの成果でもある。今でもわが国では「日本はアジアではない」みたいなおかしなもの言いをする人がいるけど、誰が何と言おうと日本はアジアの国であり、我々日本人はアジアの一員だ。どうもまだ明治以来の”脱亜入欧”みたいな意識が残っているのかねえ…
私たちは自分たちの足元であるアジアについてどれほど知っているだろうか? 先入観や固定観念は後に人によって都合よくこしらえられるものだ。実際の史実とは違う。そんなシロモノはきもちわるいぜよ。これからは、「日本の歴史」も、アジアという、より広い視野のなかで洗い直す必要がある。
この本を読んでから、改めて『古事記』『日本書紀』に目を通してみるのもいい。ヤマト政権上層部が、なんのために『古事記』や『日本書紀』編纂を命じたか。その政治意図が浮き彫りになってくるはずだ。そして、列島にヤマト政権をつくった人々のルーツも明らかになる。



